うつ病は心の風邪のようなもの

いい言葉がいい人生をつくる 斎藤茂太

患者さんを診察し、うつ病だと病名を告げると、「自分は精神科のお世話になるような人間ではない」と血相を変える人もまだある。
だが、うつ病は心が風邪を引いたようなもの。
ウツになったことを機会に、それまでの目一杯の生き方から脱し、満点を取らなければ満足しない自分を卒業して、のびやかに生きられるようになり、今ではマイペースの人生を送れるようになった患者さんを何人も知っている。

うつやノイローゼになりやすい人は、人一倍心の感度が高いともいえる。
弟の北杜夫の場合、躁うつ病を作家としての作風に活かし、それらをうまく書き分けている。
まあ、うつの人に「うつになって良かったと思え」と言っても無理というものだろう。
でも、うつを仕事の糧にしている人もいるよと、ちょっと教えてあげたくなる。