ありがとう

投稿より

あなたは、もうすっかり忘れていることでしょう。
小学校二年生の時、不発弾の爆発で目が見えなくなった僕でしたが、一年くらいするとかすかな回復の兆しがありました。
そんな真夏の夜、花火大会がありました。
楽しみの少なかった当時、それは貴重なそして夢のあるイベントでした。
心をときめかすのは音だけで、花火はやっぱり見えず、周囲の子供たちの歓声ばかりが聞こえます。
僕はそれが羨ましく、ほとんど泣きそうでした。

その時、中学生だったあなたが、僕のすぐ後ろに来て「こっちよ~、よ~く見てごらん!」と言って、両手でほっぺをはさむようにして、空を向かせてくれました。
急にうれしくなって、食い入るように夜空を仰ぎました。
「見える?」と言う、あなたの声はやさしかった。
本当は見えていたのか、見える気がしたのか、分からなかったけど、僕は一生懸命に頷きました。

視力はついに戻りませんでしたが、あの時の手のひらの温かみとその時感じたうれしさは、花火の思い出の中にずっと生きています。