「生・病・老・死・苦」からは、誰も逃れられない。

みっともないお金の使い方 川北義則 

あなたは、ほとんどの幸福をお金で「買える派」か「買えない派」か、どちらだろうか。
たいていの人は、「川北さん、ほとんどのものはお金で買えますよ」という。
病気になっても、お金がなければ十分な治療が受けられない。
お金があれば、治る病気はいっぱいある。
だから、命もお金で買える。
また、お金のない男とある男を比べれば、ある男の方が圧倒的にもてる。
恋だってお金で買える。
高学歴もお金で買える。
東京大学に行くのも、月謝の高い有名塾で学ばないと合格は難しい。
親の収入の高さと東大の東大の入学者数は正比例している。

実は長い間、私はずっと「買える派」だった。
お金は幸福の十分条件ではないが、必要条件である。
人の営みの9割がたはお金で解決できると思っていた。
そんな私が「買えない派」にまわった理由は、2012年に亡くなった邱永漢さんに関係している。
ある雑誌の対談で、邱永漢さんが次のようなことを述べていた。
「毎月の小遣いを100万円自由に使える身分になると、その先はどれだけ収入があっても、基本的に大きな差異はなくなる。みんな似たライフスタイルになるのだ」
この言葉を聞いて、金持ちになるとは「お金の限界を知ることだ」と思ってしまった。
古語に、「何によらず金や德にて叶わざること、天が下に5つあり」という。
その5つとは「生・病・老・死・苦」である。

お金は人生を幸せにする道具ではあるが、すべての望みを叶えてくれるわけではない。
「生・病・老・死・苦」からは、誰も逃れられない。
だから、お金と幸福を結びつけるのは、もうやめよう。
お金は稼いで使う。
それだけでいい。